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米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設工事をめぐり、工事に反対する県が国の是正指示を違法と訴えた訴訟の上告審判決で、最高裁が県側の上告を棄却した。県の敗訴が確定したことになる。
玉城デニー知事は判決後、「極めて残念」で「深く憂慮せざるを得ません」とし、判決内容を踏まえて今後の対応を検討するとコメントした。
国に対しては「県民の意思に沿うよう判断してもらいたい」と語った。辺野古移設の断念を求めていることになる。
これはおかしい。法治国家の首長として玉城氏がとるべきは、司法の最終判断を受け入れ、国の工事設計変更への承認を表明することである。
辺野古沿岸部の埋め立て工事海域に軟弱地盤が見つかり、防衛省が地盤改良に伴う設計変更を県に申請した。だが、県は承認せず、国の是正指示にも従わずに提訴した。
今回の最高裁の判決で、玉城氏は設計変更の申請を承認する法的義務を負った。その義務を速やかに果たすべきだ。
玉城氏を支持する革新系団体からは、県が別の理由をつけて再び「不承認」とするよう求める声が出ているが言語道断だ。法治国家の基本ルールを逸脱してはならない。
設計変更を承認せず、3年以上も工事を遅らせた責任は県にある。平成8年に移設を条件とする普天間飛行場の全面返還で日米が合意してから27年が経(た)つ。近年は県と国の泥沼の裁判闘争が続き、判決に至ったケースではいずれも県が敗訴した。いい加減にしてほしい。
普天間飛行場は市街地に囲まれている。辺野古への移設は、普天間飛行場周辺に暮らす県民の安全を図るための事業だ。さらに、中国などの増大する脅威から沖縄を含む日本を守りぬくためでもある。返還後は、跡地の利用で県経済の活性化につなげることもできよう。
玉城氏は知事として何が県と県民にとって大切かを虚心坦懐(たんかい)に考え、法的義務を履行し、移設協力へ転じるべきだ。
国は移設工事を着実に進め、普天間返還を実現しなければならない。米軍基地の多い沖縄の負担は大きい。引き続き整理・縮小に尽力するとともに、基地と辺野古移設の重要性について丁寧な説明が必要である。
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2023年9月5日付産経新聞【主張】を転載しています